2009年10月31日

たとえば蝶の羽ばたきのような

#ごく個人的な覚え書き。 本のレビューではありません。

イヌコの蝶 に導かれるままに、田口ランディ氏の 『パピヨン』 を一気に読んだ。
なんとなく読まず嫌い的な、生理的なにおいのかみ合わなさから、
これまで彼女の本を手にとったことはなかった。
ちゃんと読んだこともないくせに、それもなんだかなー、な話だよね。

あまりに既視感のある光景、無意識に刻まれた記憶の断片、
個人的すぎるくらいによく知る感情や、ふいに現る言葉の、連続。
エリザベス・キューブラー・ロス女史 の蝶を追い求めながら
シンクロニシティに導かれていく田口さんの内側に、
まるでいまの、もしくはいつだかの自分を見ているような気がしながら。
(あ、こういう思い込みの激しいところも含めて… 笑)

シンクロニシティという言葉が頻繁に出てくる。
意味ありげな偶然の連続。 不思議なまでの一致。 共時性。
ユング語を用いれば、これらをシンクロニシティと呼ぶのだそうな。

 ユングは、全てではないにせよ、いくつかの 「偶然の一致」 は
 単なる文字通りの 「偶然」 ではなく、非因果的な複数の事象の「同時発生」か、
 あるいは普遍的な事象を作り出す力の連続性によるものであると信じたのである。

 Wikipedia - シンクロニシティ

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2009年10月29日

09GPS ロステレコム杯が終了し… 〔2. Mao Asada〕

 生物が呼吸することに理由などないように
 目の前を滑っていく気配は、まるで通り吹く風のように当たり前に

 果たしてこれは 芸術が自然を表現しているのか
 それとも 自然が芸術を模倣しているのか
 というような、わたしは ある種の倒錯感におそわれました。

 そして彼女はきっと、気づいていないんじゃないかと思いました。


 09 国別対抗戦にて 〔3. Mao Asada "Clair de lune (月の光)"〕 2009.04.25

宇宙に注意をうながさなくても毎朝ちゃんと太陽がのぼってくるように、
大海が規則正しく満ち干をくりかえすように、教えなくても時期がくれば花はちゃんと咲き、
星は正確に軌道を流れていく。まるで意識の介在なく。
後にも先にも、あんなスケートを観たのは初めてだったし、(@4月 国別SP)
全身で知覚したあの記憶を、忘れることはないと思う。

浅田真央選手自身が何も気づいていない、というあの認識のなさに、
スケートファンとしてはときどき、ものすごくもどかしい思いに陥らされるのだけど、
そこが彼女の素敵なところでもあり、
そんな彼女の完全な不完全さを、たぶんわたしは、なんか好きだと思っている。
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2009年10月23日

翻案劇 『サロメ』 10/21 マチネ

salome
新大久保 東京グローブ座
1階 G列 センター

姫 (サロメ): 篠井英介
修験者 (ヨカナーン): 森山開次
妃 (ヘロデア): 江波杏子
王 (ヘロデ): 上條恒彦

原作: オスカー・ワイルド
演出: 鈴木勝秀

         −−−−−−−−−−−−−−−

イギリスの戯曲 『サロメ』 が、日本文化に落とし込まれた形で上演される。
『サロメ』 とは切っても切れない関係にある ビアズリーによる一連の挿絵 は、
116年前、実は、日本の浮世絵に多大なる影響を受けて描かれたものだったりする。
個人的に惹かれたポイントでもあり、めぐり合わせの妙がおもしろいなあと思う。

舞台装置のシンプルで大胆な構図が浮世絵を思わせるものならば、
江波杏子氏の妃などまさに、ビアズリーの挿絵から抜け出てきた女のよう。

下手で奏でられる雅楽と、雅楽のような篠井英介氏の声と台詞、
精霊が信じられていた頃の祈祷を思わせる森山開次氏の踊りと声は、
まさに言葉の先祖、踊りの先祖 な世界だと思った。

*以下、やや露骨な単語が出現いたします。 ネタバレともどもご注意をば。

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posted by Riccazow at 12:33 | TrackBack(0) | 舞台観劇感想

2009年10月21日

蝶に乗って散歩

もっと悲しみに打ちひしがれるものかと想像していたのだけど、
イヌコの死を受け入れた今、わたしのなかにあるものは
不思議なほど安らかな幸福感ばかりなのだから驚く。

寝たきりイヌ生活の一年三ヶ月はとくに、老犬性痴呆の進行をいいことに(笑)
それはもうわがまま放題、お世話してもらい放題、食べさせてもらい放題、
夜鳴きし放題、マッサージしてもらい放題、うれしいときには笑い放題 (笑顔をつくるのだ)
リビングの床に布団を敷き、わたしと母とが、ひと晩交代でイヌコと寝ていた。
まあ、たいがいは鳴いたり寝たり食べたり飲んだり笑ったりしているうちに、
深夜でも明け方でもないような時間を迎えていたわけだけど。
大河の宮崎あおい嬢にちなんで、わがままイヌコは "姫さま" と呼ばれていた。

すべてにおいて出し惜しみなく、歩ききったし、生ききったんじゃないかな。
うちに来てくれてほんとうにありがとう、ありがとう。
10月15日、息をひきとって間もないイヌコのあったかい背中をさすりながら、
涙といっしょにこみ上げる思いと、言葉は、 ありがとね、 ただそれだけだった。

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posted by Riccazow at 11:46 | TrackBack(0) | イヌノリカ

2009年10月16日

Angel と Adios Nonino

病を発症させたエンジェルが、白の上下を着て、膝を折るように横たわっている姿を、
いくら21列目だったからとはいえ、遠くてはっきり見えなかったからとはいえ、
うちのイヌコと見間違えたことは内緒だ。 (@ACTシアター 8/9 RENT) (*1)

 大切な家族を亡くしたひとたちのために
 僕の役を捧げたい

 Justin Johnston as Angel RENT Filmed LIVE on Broadway

数日後、エンジェルは亡くなってしまうのだけど、
白い布が光を透し、しゃらしゃらとヴェールのように、
まるで神のところに嫁いでくみたいにきれいな姿で、
この世から消えてゆく最後の一瞬、ふーっと神々しく微笑むんだよね。

自分にとって、どうやって死を受け入れるのが幸せなんだろうかと
数日前、ふと思いごとをしながら思い浮かんだのは、
この光のなかで微笑むエンジェルの最後と、
ジェフリー・バトル "Adios Nonino (さようなら、お父さん)" の フィニッシュ だった。 (*2)
天に逝った父を悼み、光のなかに残像をつかむように悲しいのに穏やかに。

まるで呼応するかのようなふたつのシーンには、きっと、
キリスト圏でいう "死は祝福" の概念が流れているのだと思う。

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2009年10月15日

"eye" と "La Strada"

前述のとおり、COIの第一部は残念な座席環境をひいてしまったこともあり、
スケーターの姿も、足元も、細かいディテールがほとんど見えない状況のなか、
殊に "eye" に関しては、短距離走者のごとく、
瞬く間にリンクを駆けていったスケーターの気配を感じるだけで精一杯だったのでした。

録画しておいたCOIの "eye" (高橋大輔選手) を観ながら、じわじわくる。

 自分で変えられないものを受けいれて、
 変えられるものを変えていくしかない!

 daisuke TAKAHASHI's Message - 2008.11.18

空気に切り込むように踊っていた昨夏の残像を思い起こすと、
new大輔氏の滑りは、なにか空気を味方に、空気の層に乗っかってるみたいだなと思う。
表層的な飾りが削ぎ落とされ、ぱっと目に映る部分は限りなくシンプルに見えるのだけど、
この滑りには、ありのままを受け入れ、ふいに逃避したくなりながらも、
変化に適応しようとしてきた一年すべての瞬間が、記憶として刻み込まれてる。
こうしてまた彼の滑りを観ることができて、ほんとうに嬉しく思います。

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posted by Riccazow at 00:53 | TrackBack(0) | フィギュアスケート

2009年10月08日

火の後に、静かにささやく声が聞こえた。

何年ぶりだかわからないくらいなかんじで読み直していた 『サロメ』 に
"ユダヤ人預言者: エリヤ" の名がしきりに出てくるので
彼も聖書のひとなのでしたっけと行き着いた旧約の列王記をふんふん読んでいたら、
ふいに、"Sound Of Silence" とすれちがった気がして、はっとする。


 主は、「そこを出て、山の中で主の前に立ちなさい」と言われた。
 見よ、そのとき主が通り過ぎて行かれた。
 主の御前には非常に激しい風が起こり、山を裂き、岩を砕いた。
 しかし、風の中に主はおられなかった。風の後に地震が起こった。
 しかし、地震の中にも主はおられなかった。
 地震の後に火が起こった。しかし、火の中にも主はおられなかった。

 火の後に、静かにささやく声が聞こえた。

 それを聞くと、エリヤは外套で顔を覆い、出て来て、洞穴の入り口に立った。
 そのとき、声はエリヤにこう告げた。「エリヤよ、ここで何をしているのか。」


  旧約聖書 列王記上 19: 11-13

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posted by Riccazow at 21:26 | TrackBack(0) | 聖書を知る試み

2009年10月04日

09 ジャパンオープンにて 〔1. クレーメルのピアソラ〕

最近よく聴いている音楽たちは、どれもこの日の気分とはまるで違ったから、
iPod を適当にスクロールしながら、だけどこれといって何を選ぶわけでもなく。
さいたま新都心駅を目指す先頭車両にて。

Gidon Kremer "Hommage A Piazzolla" これを最後に聴いたのはいつだったか、
一年以上、もっと前かも… スクロールする指がここでとまったのはきっと
2007年3月、ちょうど東京ワールドのころ、
東京体育館に通う行き帰りの電車でよく聴いていたからじゃないかと思う。

あれからたった二年半、なのか、二年半も、なのかはわからないけれど、
二年半前は耳にとまることのなかったチェロのベースの静かな存在感に、ひとり驚いた。
二年半という時間を確実に過ごしてきたことを実感させられたし、
すべては脈々と変化しつづけているのだなと思った。
同じところで同じように、何ら変わることなく過ごしているこの瞬間にも、この瞬間にも。

JOが終了してCOIまでの空き時間、会場周辺は毎年のことながらどこも人で溢れ、
屋内はそれだけで息苦しく、すでに少し人づかれしていたから、
どこか屋外の、空を眺められそうな場所を… と、
少し離れたところに、いい場所を見つけてしまった。
それにしても夕方5時を過ぎたころの空って、こうも刻々と彩度を落としてく。
一秒前と何ら変わらない瞬間の積み重なりが、一時間後には劇的な変化を遂げている。
人も空も同じですねと思いながら、クレーメルのピアソラを。


帰り道は三つ手前の駅から、頭上の満月と、夜風にあたるように、
エクローグと夜の澄んだ空気とがあまりによく似合うので、歩きすぎてしまった。
静かな夜道で聴くエクローグは、奏者の気配までも美しい。
ああ、いろんな種類で泣いた日だった。


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2009年10月03日

見ろ、あの月を。

 エロディアスの侍童: 見ろ、あの月を。不思議な月だな。
  どう見ても、墓から抜け出して来た女のやう。
  まるで死んだ女そつくり。どう見ても、屍をあさり歩く女のやう。

  (中略)

 エロディアスの侍童:  まるで死んだ女のやう。
  それがまたたいそうゆつくり動いていゐる。


 岩波文庫 『サロメ』 オスカー・ワイルド (訳: 福田恆存 p13)


いつ以来になるのかもう忘れたけれど、『サロメ』 を読み直している。
福田恆存氏の旧訳が好きだなあと思う。
真っ黒い雲のすき間から姿をのぞかせる十四番目の月がこわく美しく、
昨日の真夜中、あれはまさにサロメの冒頭だった。

ちょうど COI が終わるころ、今日は十五夜。
会場の熱気をあとに、月が見えるといいのだけど。


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2009年10月02日

7月27日の。

 スタジオを出ると、雨は上がっていました。
 先ほどまでの激しい雷雨がウソのよう。
 宿泊先のホテルへと向かう車中からは、とてもキレイな虹を見ることができました。
 ここで「トータル何色見えるか?」という話題になり、ジェフは「5色見えるよ」とのこと。
 そして急きょ虹の撮影大会に。ジェフも持参したデジカメでこの虹をおさめていました。

 7月27日の18時半ごろ。この虹をご覧になった方はいらっしゃいましたか?

 ジェフリー・バトル 『chapter TWO』 メイキング・ダイアリー 2009.10.01 撮影第一部終了


こんなところで勝手に返事をしてみる。
ゴッホさんの、あの日に見た虹のこと は、くっきりと。 (*1)

そっかー、あの虹をジェフも見てたんかー。
ぜんぜんちがう場所で、同じ虹の端っこ。

どうりであの子、天使だったんかな。
ああ、こういうのってなんかいい、なんかいいなーと思いました。
予期せぬ虹の残像に泣けてきて困る。


金曜の夜は、ギターを聴きに、
土曜日は、あっという間に4回目のジャパンオープン。
プロ枠で滑るジェフを観る日がこようとは、つひぞ想像しえず。
予想せずに、うわーっと観てこよう。


*1: 2009.7.27 - ゴッホと虹


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>追記 10/3 2:10 コメントありがとうございます
posted by Riccazow at 02:17 | TrackBack(0) | ひとりごちる
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